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「電気自動車(EV)こそが自動車の未来」と語られてきたこの10年。だが普及が進むほどに充電インフラの不足や航続距離の短さ、電池原料の偏在、寒冷地での性能劣化など理想と現実のギャップが浮き彫りになる。一方で「過去の遺物」とされたエンジンは静かに進化を続けていた。ガソリンエンジンの熱効率はいよいよ50%へと迫り、実現不可能とされたレベルに達しつつある。燃料採掘や発電などを考慮した総合的な環境性能で、地域によってはEVと遜色ないか、上回る水準になっている。燃焼制御やスーパーリーンバーン(超希薄燃焼)・可変バルブタイミング制御などあらゆる角度から進化する。排ガス浄化技術も高度化し走るほどに大気をきれいにする研究まで始まった。日本車メーカーはEVシフトが叫ばれる裏側でエンジン開発の歩みを止めなかった。トヨタ自動車は欧州の厳しい排ガス規制に通用する次世代エンジンを提示し、ホンダはハイブリッド車(HEV)専用エンジンを刷新した。日産は“究極の燃焼”を掲げ、SUBARUは水平対向エンジンの特性を生かしたHEVを磨き、マツダはロータリーを発電用として復活させた。HEV用エンジンから水素燃焼まで多様なアプローチを同時並行で進める日本の「マルチパスウェイ戦略」に再び世界が注目し始めた。本書はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車、マツダ、SUBARU、スズキ、三菱自動車の日本車7社を軸に日本の強みと戦略を徹底的に解説する。加えて欧州のEV偏重政策が転換を始めた背景や中国勢が40%後半の熱効率で猛追する実態などを世界の潮流変化も豊富なデータとともに示す。欧州ではEV販売が鈍化し、厳格だった環境規制も緩和へ転じている。中国でもプラグインハイブリッド車(PHEV)が急拡大し「EV一本槍」からの軌道修正が進むなど、世界は一度高まった理想から、現実を踏まえた新たなフェーズへ移行しつつある。さらにロータリー復活の舞台裏やエンジン音の価値の行方、HEVの深化など開発現場の最新の声や周辺エピソードについても多く集めた。日本の豊富なエンジン技術者の存在が日本の強さに結びついていることが見えてくる。EVかエンジンか――。本書を読むと二者択一ではない未来が見えてくる。エンジンが次の50年へ向けて消えることはなく、新たな進化のステージに入ったことを理解できるはずだ。
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出版社からのコメント
「電気自動車(EV)こそが自動車の未来」と語られてきたこの10年。だが普及が進むほどに充電インフラの不足や航続距離の短さ、電池原料の偏在、寒冷地での性能劣化など理想と現実のギャップが浮き彫りになる。一方で「過去の遺物」とされたエンジンは静かに進化を続けていた。ガソリンエンジンの熱効率はいよいよ50%へと迫り、実現不可能とされたレベルに達しつつある。燃料採掘や発電などを考慮した総合的な環境性能で、地域によってはEVと遜色ないか、上回る水準になっている。燃焼制御やスーパーリーンバーン(超希薄燃焼)・可変バルブタイミング制御などあらゆる角度から進化する。排ガス浄化技術も高度化し走るほどに大気をきれいにする研究まで始まった。日本車メーカーはEVシフトが叫ばれる裏側でエンジン開発の歩みを止めなかった。トヨタ自動車は欧州の厳しい排ガス規制に通用する次世代エンジンを提示し、ホンダはハイブリッド車(HEV)専用エンジンを刷新した。日産は“究極の燃焼”を掲げ、SUBARUは水平対向エンジンの特性を生かしたHEVを磨き、マツダはロータリーを発電用として復活させた。HEV用エンジンから水素燃焼まで多様なアプローチを同時並行で進める日本の「マルチパスウェイ戦略」に再び世界が注目し始めた。本書はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車、マツダ、SUBARU、スズキ、三菱自動車の日本車7社を軸に日本の強みと戦略を徹底的に解説する。加えて欧州のEV偏重政策が転換を始めた背景や中国勢が40%後半の熱効率で猛追する実態などを世界の潮流変化も豊富なデータとともに示す。欧州ではEV販売が鈍化し、厳格だった環境規制も緩和へ転じている。中国でもプラグインハイブリッド車(PHEV)が急拡大し「EV一本槍」からの軌道修正が進むなど、世界は一度高まった理想から、現実を踏まえた新たなフェーズへ移行しつつある。さらにロータリー復活の舞台裏やエンジン音の価値の行方、HEVの深化など開発現場の最新の声や周辺エピソードについても多く集めた。日本の豊富なエンジン技術者の存在が日本の強さに結びついていることが見えてくる。EVかエンジンか――。本書を読むと二者択一ではない未来が見えてくる。エンジンが次の50年へ向けて消えることはなく、新たな進化のステージに入ったことを理解できるはずだ。